私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「MONGOL モンゴル」

2008-04-13 16:55:00 | 映画(ま行)

2007年度作品。ドイツ=ロシア=カザフスタン=モンゴル映画。
陰謀が渦巻く時代、モンゴルの一部族の頭領の息子として生まれたテムジン。待ち受けるのは、父の毒殺、裏切り、復讐、異国での投獄という壮絶な運命。そして、優しさを秘めた強靭な魂で運命と闘い、次第に統率者として頭角を現してゆく。
第80回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされ話題を呼んだ作品。
監督は「ベアーズ・キス」のセルゲイ・ボドロフ。
出演は「サッド ヴァケイション」の浅野忠信、「初恋のきた道」のスン・ホンレイ ら。


まさに大河作品と呼ぶにふさわしい風格を備えた映画だ。
雄大な自然と、人員を多くつぎ込んだ戦闘シーン、騎馬のシーンの迫力や、歴史的な背景の深み、そしてあぶりだされる一大英雄の叙事詩的なプロット。ともかくその外郭の大きさは目を見張るばかりだ。

その中で語られるチンギス・ハーンことテムジンの物語は説得力に満ちている。
奴隷として苛酷な人生を送った様子を描いており、その劇的な人生には驚かされる。また妻を取り戻すために戦う愛に生きた側面や、味方や敵に鷹揚に振舞う姿、そして掟を犯した者を容赦なく殺すある意味では誠実な姿などが描かれており、テムジンという存在が立体的に浮かび上がっているのが目を引いた。

しかしそういった長所を認めながらも、どうも心に訴えるものは乏しいとも感じた。早い話、それはこの話が地味だからだろう。
物語はともかくリアルなれど、リアルすぎてエンタメという形になりきれていない。またテムジンの人間造形はすばらしいものの、その部分から、何かプラスアルファで発展するものがあるわけでもない。
要はでかいスケールのわりにパンチが弱いのである。そこが残念な限りであった。

浅野忠信はモンゴル語という難しい条件でがんばっていたと思う。テムジンという後に英雄になるキャラを丁寧に演じていたのが好印象だ。

積極的に推せる作品ではないが、映画の雄大さは確かで、つくり手の誠実さは存分に伝わる作品である。

評価:★★★(満点は★★★★★)

出演者の関連作品感想:
・浅野忠信出演作
 「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」
 「花よりもなほ」

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